下部のサムネイルで「露出」を変えて比較できます。左端の「 Fusion」が露出融合を実施したパノラマです。

「小笠原伯爵邸」についてはこちら。ブライダル・パーティもできるリッチなレストランです。歴史(wiki)はこちら

グラフィック社から出版されている 『Image-Based LightingのためのHDRI制作ガイド』用に撮影したパノラマです。こうして見ると、書籍とは違う見方でHDRI(ここで見るのは、Exposure Fusion)が理解できると思います。特に、「Fusion」と「0」を見比べると、その効果が一目瞭然です。明るい空と、室内の奥の暗い部分を比較してみてください。

HDRIは、High Dynamic Range Imageハイダイナミックレンジ画像)の略で、画面に写っている範囲の明るさを忠実に記録する技術のこと。通常のディスプレイや印刷は、カメラのシャッタースピードや絞りに換算して、だいたい5段分くらい(デジタルの値でいうと2の8乗=256階調)の情報しか記録(表現)できません。なので、すごく明るい部分は真っ白に、すごく暗い部分は真っ黒になります。でも、現実は、真っ白な部分にも、真っ黒な部分にも、モノはあるし階調もあります。これを忠実に記録したい、データ化したいというのが、HDRI。これは、通常のデータ形式では保存できませんので、.hdr などが使われ、ビット数も通常の8ビット(高くても16ビット)ではなくて、32ビットで記録されたりします。このデータは、画像合成(CG)の元データや研究用に使われます。

でも単純に考えて、通常のディスプレイで表現できる範囲を超えていますから、一般的な用途には向きません。なので、HDRIの情報量を適当に料理して、表現できる階調は広く(真っ白や真っ黒ができるだけ少ない)しながら、通常のディスプレイで表現できる階調の範囲にとどめ、なおかつ人の目で自然に見えるように調整する技術が、Exposure Fusionです。直訳して、露出融合。一般的に普及しているHDRIのアプリケーションの多くは、厳密にはこちらに入ります。なので、正式なHDRIは、True HDRIと読んで区別することもあります。

Exposure Fusionの階調再現については、ちょっと独特の印象がするはずです。通常の写真では、真っ白や真っ黒になってよい部分の階調が出ていて、色調の鮮やかさも独特です。調整は可能ですが、HDRIファンは、この独特な感じを好むようです。私を含め、写真を長くやってきた人種は、これをあまり好まない傾向があります。

厳密に被写体の明るさを忠実に記録するHDRIは、この例のように露出違いの画像を合成するだけでは無理かも(実際の明るさをリニアに記録できない?)という話もあって、なかなかに奥深いジャンルです。

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