見方の説明ビデオです。現在の地図を右下に付けました。方角を合わせて、古今を比較してみましょう。

桑山哲郎さんから寄せられた情報で、「日本カメラ博物館公式チャンネル」に、ここで紹介している元のパノラマ写真を古写真研究家の井桜直美さんが案内しているビデオ『100 views of Tokyo. A walk together with 19th century photographs. Episode 3: Kanda Ward』があるよ、ということで、本パノラマ上でyoutubeのビデオを見られるようにしました。左上のボタンをクリックしてご覧ください。

また、『日本初期写真史連続講座 第二回 幕末明治の東京 ~変わりゆく江戸の町並み~』には、撮影時の足組の写真も見られます。24分あたりから。

 

“KANDAルネッサンス出版部”からでている大型本に『神田まちなみ沿革図集』があります。紹介文に、「寛永年間から現代まで、神田の記録をたどった地図集。神田っ子39名の協力による「思いで地図」、建築中のニコライ堂から撮影されたパノラマ写真を壮大なスケールで紹介。」とあって、古い時代のパノラマ写真とあらば購入しない手はないとばかりに入手したのが2013年のこと。

掲載されたパノラマ写真は当然ながら、今、このwebサイトで紹介しているような幅広の写真ではありません。正方形のフォーマットで、1枚ごとに方向をずらしながら撮影した計13枚の写真で構成されています。縁起については、こちらの記事に次のようにあります。

「明治22年1月12日の毎日新聞によれば、「当時、政府は市区改正にむけて、その資料及び記録のために、ニコライ堂を施工していた大日本建築会社を通じ、写真師田中武に委託、堂上に三間四方の足場を築き、天気晴朗の日を選び撮影した」

のだそうです。掲載された一連の写真を複写して、昔っぽくセピアに調整したものが下になります。

 

撮影者が日本人というのにまずは驚くのですが、それぞれの画面の左右の端をよくよく見比べると、左右の被写体が微妙にうまく重なるように撮影していて、かなり厳密にカメラの向きを調整していることがわかります。前後左右360度を13カットで撮影していますので、単純に割り算すると、横幅の画角は約28度になります。オーバーラップはかなり少なめであることから、撮影された写真の横幅の画角は28°よりも少し広めの、30度前後であろうと推測できます。この値を元にして、13枚の写真をつなぎ合わせると、このようになりました。中央よりの左側と左側の空の方向に少しだけ欠けた部分がありますが、横長画面の左右両端がつながりますので、これで完全な360度になります。

何インチのカメラかはわかりませんが、「コロディオン湿板」を使っているそうです(桑山 哲郎さんから指摘で修整)。湿板でよくぞここまで無駄の少ない完璧なまでの360°パノラマを撮影したものだと、感動を禁じ得ません。画像をつなぎ合わせたソフトから、一枚当たりの横幅の画角を調べると、約29度でした。短辺基準で計算すると、35ミリカメラなら焦点距離45mmちょっと。8×10カメラの焦点距離約380mm弱のレンズを使っていることになります。いわゆる標準レンズ的な焦点距離で撮影しているわけです。

大判カメラなのによく近景から遠景までよくピントがあっているなぁ、とよくよく思い出したら、レンズのチルトアオリを使えばよいのでした。がしかし、先に書いた画面の空側の欠けからすればカメラをやや下向きにして撮影していることがわかりますから、多分、被写界深度で間に合ったのでしょう。

ところで、このパノラマ表示には、次のような工夫をしました。実際に触りながら確認し、細部を見て楽しんでいただければと思います。

  1. 画面には主要なランドマークを表示しています。邪魔な時は、左上の[案内]ボタンで非表示にできます。
  2. 右上の[面白ポイント]をクリックすると、何だこれ? と思えるポイントを表示します。
  3. 古今比較ができるよう、右下に現在の地図を表示しました。クリックで大きくなり、赤いレーダーでも画面を動かせます。
  4. ぐいぐい拡大できますので、驚きの高精細をお楽しみください。人物を見つけると結構うれしくなります。
  5. 天地は視野制限をしていますが、見たい部分を拡大すると、画面中央で見られるようにしています。

奇跡でも起こって、この種板か印画紙を元に作り直すことができれば、もっともっと細部まで見られるようになるはずです。やれないかなぁ。

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