オブジェクトVRの撮影は、被写体をぐるぐる回転しながら撮影します。ちょっと想像すればわかりますが横一列の撮影はカメラ一台で済みますが、複数列の撮影になると一台のカメラで位置を変えて複数回ぐるぐる回すか、複数台のカメラを使って一回だけ回すか? のいずれかの方法になります。当然ながら、複数台のカメラで一回だけ回す方が楽です。カメラの設定やらなんやら別の面倒さは出てきますが、数多くの被写体を撮影するとなると実務的にこの方法しかありません。
ところが,複数台のカメラを設置するといっても、被写体から等距離で、しかも垂直方向に設置しなければなりませんから、とりわけ上部のカメラの設置は難儀です。ネットで調べてみると、オブジェクトVR用に複数台のカメラを設置できる装置がいくつか見つかります。全部探したわけではないのですが、かなり大がかりで高価。しかも、カメラ位置の自由度が思ったほど高くないように思います。
ちゃんとした物撮りをするという観点からすれば、被写体の大きさやレンズの焦点距離によって撮影距離を変えたいのですが、これが上手くできて、しかもコンパクト(分解して収納でき、組み立てが簡単)が理想です。
というわけで、いろいろ試行錯誤した歴史をここに紹介します。現在、さらに強度を増して運用しやすい「V3」を制作中です。
V0
三脚やスタンドを使って頑張る
カメラを固定するなら、三脚を使えばいいじゃん。というもっとも単純な発想。
ただ、水平位置のカメラを基準にすると、カメラを上にしかも前方に設置していくのはかなり難易度が高いです。前方のカメラが後方のカメラの邪魔をしないように、カメラを横に出すアングルを使ったりするのですが、当然ながらカメラはどんどん不安定になり、フレーミング一つが至難の技です。このケースでは、一番上のカメラは、スタジオ用のスタンドを使ってやってなんとか固定できた感じで、三脚ではおよそ不可能なレベルだと思いました。
本当の話、こんな面倒なことは二度とやりたくありません。
原理発見
最小の仕組みで実現
そんなわけで、あれこれ考えていたのですが、ある時ふと、「円周を通過する直線は2点で交わる」という事実に思いが至り、カメラが4台であれば2本のフレームて自由自在に固定できる(はず)という結論が閃いたのです。
論より証拠、左の図を見れば一目瞭然。
これなら、撮影距離が変わっても、カメラの取り付け位置も、フレーム同士の固定位置と角度を調整するだけで対応できます。
お、イケそうですな。
V1
木製フレームで制作
運良く、ちょうどいい木材があったのです。なので、組み立てるためのボルトとワッシャーだけ揃えて、ドリルでびゅんびゅん孔をあけて作ったのが、左の写真。
カメラは4台。水平下、水平、斜め上30度と60度。当たり前ですが、上部は横にグラグラするので、スタンドを使って固定しています。
現実問題として、仕組みはこれでOK。実用に耐えることがわかりました。
難点は、木材はもともとからして歪み(反り)があって、しかも力を加えるとさらに歪むこと。このため、カメラのフレーミングの調整は超大変。というか、厳密には無理でした。ので、画面への被写体の位置決めは、撮影後のトリミングで行いました。また、被写体距離やカメラの位置を調整するごとに、木材にどんどん孔をあけなければならないこと。その内、孔だらけになって、ますます強度的に弱くなっていくでしょう。
V2
アルミフレームにバージョンアップ
原理はそのまま、材質を木製からアルミ製にして、強度的にも強くしようと頑張ったのが左の写真です。
約4センチ角のアルミフレームのそれぞれの面には溝があって、横に張り出したフレームの位置や角度は自由に調整できます。
カメラは溝を使って固定しますから、位置調整も自由自在。この例では、短い斜めの支持フレームを含め3本で、5台のカメラを設置しています。
木製フレームに比べると、セットアップの作業時間は1/3以下になりました。すばらしい。
ただ、先端は横ブレするので、ワイヤーで固定しました。でも、これが足に引っかかりやすいんですよ。案外、見えないし。
V2A
小さい被写体にも対応
もともと構造物用に作られた溝があるだけのアルミフレームですので、組み合わせはどうにでもできます。
なので、組み方や位置を調整するだけで、撮影距離を短く(カメラの位置の円の直径を小さく)することができます。
これで、仕組み的には問題ないことが分かりましたから、横ブレを防止するような作りにしたり、各部の作りをもっと使いやすくしたいなぁ、と現在「V3」ができつつあります。
オブジェクトVRジグ・V3(仮面ライダーV3 のノリで)、乞ご期待。