壺の「開き」です。拡縮して、龍のレリーフを堪能してください。右の写真が実物。

「物」をぐるぐる回しながら多数の写真を撮影し、ソフト上でぐるぐる回して観察する技術が「 オブジェクトVR」ですが、円柱の表面を平面に展開して見せたいという要求があります。壺や器に描かれた絵を開いて見たい、というようなケースです。蒔絵を施された万年筆の絵の全体を見たい、というのにも使えます。

単純には、被写体をセンター出ししてゆっくり回転しながら、ラインセンサーを使ったカメラで撮影すればよいのでしょう。でも、そんなものが手元にあるわけでなし。というわけで、以下は、これを2011年ころに試した例です。

考え方はラインセンサーと同じで、被写体を回転しながら撮影した複数の写真の中央部分だけを繋いでいく、というだいして代わりばえのしない発想です。でも、案外これで上手くいきました。被写体は1度ずつ回転して、総計360カットを繋いでいます。

解像度を上げるなら、より細かく回転させる。カメラの解像度を上げる。よいレンズを使う。これで間に合わなければ、上下の分割撮影をして、それらを組み合わせるといった方法があります。あと、立体感や光沢の感じはライティングでいかようにでも調整できます。

というわけで、こんなんできたよ、といろんな人に吹聴していたら、博物館の方が、内側は撮れないの?  とのたまうのです。なんでも、発掘された壺などの内側には、当時これを制作した人の指紋がついていることがあって、これを元に作り方を想定できる、のだそう。

あ、それ面白そう。ということで、試したものを下に掲載します。壺の口からレンズを差し込んで円周魚眼レンズでワンショット撮影。これを、スケールに合わせて伸縮させたものです。伸縮は、スケールのテンプレートと、実物の物差し同士に、特徴点を打っていって、レンズ収差のパラメーターを計算して補正(ソフトがやってくれる)しました。まあまあ、上手くできそうだなぁ、といったところで、他の用事が忙しくなってそのまま放置状態です。

今なら、カメラも小型になったし、もっといい感じでできるんだろうなぁ、と思ってはいますが、さて・・。何かいい機会があればいいんですけれどね。

ちなみにこの壺は沖縄産で、泡盛が入っていました。知人が抽選で当てたのだそうで、飲み会の時に持ってきてくださり、皆で堪能した後、残りは全部私が呑んでしまいましたとさ。

坪の外周

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壺の内面

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後日談

壺の外周のパノラマが、「国際緑化推進センター」の方の目に入ったのでした。こちらからアプローチしたわけではなく、ネットでいろいろ探して見つけてくださったみたい。

たとえば、砂漠のような地域で植物を増やしていくにはどうしたらいいのか? ということを研究していて、現地で植えた植物の根の張り方を画像で記録して、定量的に知る方法を探している、のだそう。そこで目を付けたのが、壺の外周撮影。円筒形に抜いた根をぐるぐる回しながら撮影し、一枚の全周写真にできたらいいんだけど・・・。

そこで、こちらの指定にしたがって撮影していただき(左上がその一枚)、つなぎ合わせた例が左下の写真です。

まあまあ上手くいくね、というところまで話は進んだのですが、1)手間がかかりすぎる。2)ぐるぐる回す時に土がぼろぼろ落ちて形が崩れる。3)この件にあんまり時間をさけなくなった。といった事情で、中断したまま。

ぶら下げて撮影するとか、撮影~ステッチをワンステップでできる装置&ソフトを作るとか・・・。アイデアはいくつかあるけれど、ここまで来ると腰が重くて、アタマもカラダも追いつきませぬ。それでもしつこく、なんとかできたらいいなぁ、とは思い続けています。